7月の特別公開文化講座は、神学と法学を中心にイスラーム教スンナ派思想を研究されている松山洋平氏(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部 准教授)を講師にお招きし、掲題をテーマにお話しいただきます。

……現在、地球上の全ムスリムのうちの五分の一から四分の一程度が、いわゆるムスリム諸国ではなく、ヨーロッパやアメリカを含む非ムスリム諸国のなかでマイノリティとして暮らしている。「ムスリムとの共生」という課題のひとつの局面は、こうした非ムスリム諸国におけるイスラームのあり方、言いかえれば、マイノリティとして生きるムスリムが、イスラーム的な規範・価値とホスト社会のそれとをいかに整合させるのか、という問題をめぐるものである。

……「マイノリティのために柔軟な解釈をおこなう」と聞くと、「マイノリティ法学では、古典的な議論が無視され、恣意的な解釈がおこなわれているのだろう」とのイメージを持つ人も多いだろう。しかし、多くの論客のファトワー・論考を見れば、このイメージは誤りであることがわかる。彼らの議論は、むしろ反対に、古典法学の議論の厳密な援用によって構築されているのである。彼らは、古典的な解釈に対抗するのではなく、長い歴史のなかで蓄積された古典的議論に正当化根拠を求めるかたちで、現代のムスリム・マイノリティの必要に沿うような斬新な解釈を提示するよう努めている。
(松山洋平『イスラーム神学』より)

皆様のご参加をお待ちしています。

「マイノリティ・ムスリムのためのイスラーム法学」
日時:7月27日(土)13:00〜14:30
場所:新館地下1階エルトゥールル講堂
講師:松山洋平氏(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部 准教授)
言語:日本語